コラム・豆知識
アスペクト比維持の重要性と意図的な変形の使い分け
画像のリサイズ時、アスペクト比(縦横比)を維持することが基本原則です。元画像が16:9の比率であれば、リサイズ後も同じ比率を保つことで、人物や被写体の歪みを防げます。商品画像で人物が横に伸びていると、プロフェッショナルな印象が損なわれます。
img要素のCSS指定で、width: 100%; height: auto;という記述が一般的です。幅を親要素に合わせ、高さを自動計算することで、レスポンシブ対応しながらアスペクト比を維持できます。object-fit: coverプロパティとの併用により、トリミング位置も制御可能です。
意図的にアスペクト比を変更する場面もあります。正方形のサムネイル生成では、元画像が横長でも1:1に変形します。この場合、object-fit: coverにより、画像を拡大して余白を埋め、中央部分を切り出す処理が一般的です。ECサイトの商品一覧で、統一感のあるレイアウトを実現するために使用されます。
クライアントへの説明も重要です。「なぜ画像が切れるのか」という質問に対し、デザイン統一性のための意図的なトリミングであることを理解してもらう必要があります。元画像の構図次第では、重要な部分が切れる場合もあり、事前の確認プロセスが不可欠です。
Retinaディスプレイ対応と2倍解像度の実装
iPhone のRetinaディスプレイやMacBook Proの高解像度画面では、通常解像度の画像がぼやけて見えます。window.devicePixelRatioが2以上の環境では、表示サイズの2倍のピクセル数を持つ画像を用意することで、鮮明な表示を実現できます。
400×300pxで表示する画像であれば、実際には800×600pxの画像を用意します。HTMLやCSSではwidth="400" height="300"と指定し、ブラウザが自動的に縮小表示します。この手法により、高解像度端末でも低解像度端末でも、それぞれに最適な品質で表示されます。
srcset属性による自動切り替えが効率的です。<img src="image.jpg" srcset="image@2x.jpg 2x">という記述で、デバイスに応じた画像を自動選択できます。ファイルサイズは4倍になりますが、視覚的な品質向上とのトレードオフを考慮した判断が必要です。
テキストを含む画像やロゴでは、高解像度対応の優先度が高くなります。ぼやけた文字は読みづらく、ブランドイメージを損ないます。一方、背景画像や装飾的な写真では、ファイルサイズ削減を優先し、通常解像度で妥協する判断もあり得ます。用途に応じた最適化が求められます。
一括処理でのファイル命名規則と管理効率化
数十枚の画像を一括リサイズする際、出力ファイル名の規則性が重要です。元のファイル名を維持しつつ、サイズ情報を接尾辞として付与するimage_800x600.jpgといった命名が管理しやすいです。後から見たときに、どのサイズの画像か一目で判別できます。
連番での管理も選択肢です。product_01.jpg、product_02.jpgのような規則的な命名により、CMSでの一括アップロードやHTMLでの順次読み込みが容易になります。Excelやスプレッドシートでのファイル名リスト生成との連携も考慮すべきです。
日本語ファイル名は避けるべきです。サーバー環境やブラウザによって、文字化けやエンコードエラーの原因となります。商品写真.jpgではなく、product-photo.jpgのような半角英数字とハイフンでの命名が、国際的な互換性を確保します。
ディレクトリ構造も事前設計が必要です。images/original/に元画像、images/resized/にリサイズ版、images/thumbnail/にサムネイルといった階層化により、ファイル管理が整理されます。後の保守作業での検索性向上にも寄与します。
透過PNG画像のリサイズと品質劣化への対処
PNG形式の透過画像をリサイズする際、エッジ部分にジャギー(ギザギザ)が発生する場合があります。canvas要素での描画では、imageSmoothingEnabledプロパティをtrueに設定することで、スムージング処理により滑らかな縮小を実現できます。
アルファチャンネル(透明度情報)の扱いも重要です。半透明のエッジを持つ画像では、背景色との合成により意図しない色の滲みが発生します。canvasでの処理時、背景を塗りつぶさず、透明のまま描画することで、この問題を回避できます。
ロゴやアイコンといったシャープなエッジを持つ画像では、ベクター形式(SVG)での管理が理想的です。SVGから必要なサイズのPNGを生成する運用により、拡大縮小時の品質劣化を根本的に回避できます。デザインツールでのアウトライン化が前提条件です。
透過部分を白背景に変換する場面もあります。印刷物用の画像では、透過処理がサポートされないため、JPEG形式への変換が必要です。canvasで白背景を描画してから画像を重ねることで、透明部分が白色に置き換わります。用途に応じた形式選択の判断が求められます。
ZIP一括ダウンロードとクライアント納品の実務
複数の画像を一括ダウンロードする際、ZIP圧縮による配布が効率的です。JSZipライブラリを使用し、ブラウザ内でZIPファイルを生成できます。サーバー側の処理不要で、クライアント環境のみで完結する利点があります。
FileSaver.jsとの連携により、生成したZIPファイルのダウンロードを自動化できます。saveAs()関数でファイル名を指定し、ユーザーのダウンロードフォルダへ保存します。大量の画像でも、1クリックでの一括取得が可能になります。
ファイルサイズの制限に注意が必要です。数百MBのZIPファイル生成では、ブラウザのメモリを大量消費し、処理が失敗する場合があります。50MB程度を目安とし、それを超える場合は分割ダウンロードや、サーバー側でのZIP生成を検討すべきです。
クライアント納品時の品質管理では、リサイズ後の全画像を目視確認する工程が不可欠です。自動処理に頼り切ると、元画像の品質問題が見過ごされます。ノイズの多い画像や、不適切な構図での切り抜きなど、人間の判断が必要な場面は必ず存在します。最終チェックリストの作成により、納品物の品質を担保できます。